基本データ

概要

本作に登場する「優秀な人材」は、モンゴル編13人、世界編27人の合わせて40人(*1)である。このうち21人は本書内に説明があるが、残る19人については不明な点が多いため、ここで検証してみることとした。


 
本書に情報はないが、比定できる人物がいる

 シナリオ  名前  所属  事典  名鑑  Wikipedia
 モンゴル  クチュ  8国  195  174  ―
 モンゴル  ココチュ  5国  196  175  ―
 モンゴル  シキトク  2国  196  171  ―
 世界  イーゴリ公  3国  195  190  Wikipedia
 世界  ガラウン  1国  195  ―  ―
 世界  フランドル伯  9国  199  181  Wikipedia


 
解説はあるが、明らかに時系列がおかしい

 シナリオ  名前  所属  事典  名鑑  Wikipedia
 世界  ピウスツキ  6国  199  ―  Wikipedia
 世界  ベク  12国  199  ―  Wikipedia


 
解説はあるが、本来は人名ではない

 シナリオ  名前  所属  事典  名鑑  Wikipedia  名鑑
 世界  スンナ  21国  197  ―  Wikipedia  ―
 世界  マジャール  10国  201  ―  Wikipedia  ―


 
比定するべき人物はいるが、確証に乏しい

 シナリオ  名前  所属  事典  名鑑  Wikipedia
 モンゴル  バマトル  11国  199  168?  Wikipedia
 世界  江宗  27国  196  177?  Wikipedia
 世界  ハインツ  5国  199  ―  ―
 世界  バルク  20国  199  別人  ―
 世界  ヒイラマ  23国  199  190?  ―


 
現状では比定不可能

 シナリオ  名前  所属  事典  名鑑  Wikipedia
 世界  ツジーヴ  25国  198  ―  ―
 世界  ネイク  17国  198  ―  ―
 世界  ベイ  22国  199  ―  ―


 
本書内に情報がある

 シナリオ  名前  所属  事典  名鑑  備考
 モンゴル  クビライ  6国  195  169  四狗
 モンゴル  ゴルチ  10国  196  173  
 モンゴル  ジェベ  13国  196  168  四狗
 モンゴル  ジェルメ  3国  196  168  四狗
 モンゴル  スブタイ  12国  197  168  四狗
 モンゴル  ボオルチェ  7国  200  168  四駿
 モンゴル  ボロウル  9国  200  168  四駿
 モンゴル  ムカリ  4国  201  167  四駿
 モンゴル  ナヤア  14国  198  174  
 世界  アルベルトゥス  8国  194  181  
 世界  イナルジューク  13国  194  179  『元朝秘史』以降はイナルチュク
 世界  クチュルグ  14国  195  175  『元朝秘史』以降はクチュルク_
 世界  クトゥブ  24国  195  179  クトゥブッディーン・アイバク
 『元朝秘史』以降はアイバク
 世界  セングム  16国  197  173  『元朝秘史』以降はイルカ・サングン
 世界  ダンドロ  11国  197  181   
 世界  長春真人  26国  198  170   
 世界  鄭仲夫  18国  198  ―  1179年死去
 世界  ドミトリ  4国  198  180  
 世界  畠山重忠  19国  199  189  
 世界  ヤラワチ  15国  201  179  
 世界  耶律楚材  2国  202  169  
 世界  ロンシャン  7国  202  191  



備考

表中の「優秀な人材」の「所属」は勢力ではなく、エリアそのものに直結している。そのため、ここでは「所属」を国番号で表した。

「事典」はその人物が記載されているページ、「名鑑」は、『元朝秘史ハンドブック』の「元朝秘史・人物名鑑」において、その人物の記載があるページを示している。
 
 
本書に情報はないが、比定できる人物がいる
   
クチュ

テムジンがメルキト族に拉致されたボルテを救い出した際、取り残されていたメルキト族の子供。テムジンより「四人の拾い子」の1人として母ホエルンに預けられた。本作でもゲームスタート時点でメルキト族が支配している第8国の「優秀な人材」として登場する


   
ココチュ

シャーマン。「テブ・テンゲリ」とも呼ばれ、『元朝秘史』ではこちらの名で登場する。チンギス・カンがカンに即位する際に功績があったが、その宗教的権威でもってチンギス・カンの世俗的権威に干渉したため、処刑されることとなった。

本作では、第5国(タイチウト族)の「優秀な人材」として登場するが、これは、彼の一族が一度テムジンたちを見限り、タイチウト族に走ったためであると思われる。


   
シキトク

おそらく、「シギ・クトク」のことであると思われる。彼はタタル族であったが、テムジンがタタル族を攻撃した際に拾われ、後にモンゴル帝国のイェケ・ジャルグチ(司法長官)となった。本作でもゲームスタート時点でタタル族が支配している第2国の「優秀な人材」として登場する。


   
イーゴリ公

チェルニーヒウ公爵イーホル・スヴャトスラーヴィチのこと。1180年代に3回にわたるキプチャク侵攻を行い、2回は勝利を収めたものの、3回目で敗れて捕虜となった。しかし、どうにか捕虜の身から逃れることができたらしく、1198年には父の跡をついでチェルニーヒウ公爵となっている。『イーゴリ遠征物語』は、そのあたりが物語のモチーフとなっている。

なお、彼の没年は1202年である。つまり、世界編がはじまる1206年の時点では、すでにこの世にいないはずであるが、はっきり言って本作で生没年や年齢を気にするのはナンセンスである。ちなみに、年代を見ればわかることであるが、モンゴル帝国の西進とは関係のない人物である。


   
ガラウン

インターネットで彼の名を検索すると、井上靖の『蒼き狼』に登場した人物であるという情報を見かける。しかし、手元の版(*2)を見ると、それに該当すると思われる登場人物は、一貫して「ガ『ウラ』ン」と記されている。

ガウランはチンギス・カンクランの子(*3)として1208年に生まれた。1211年の第一次金国侵攻では、両親の思惑の一致によって父と行動をともにしている。しかし、1213年の第二次金国侵攻が冬に行われると、クランはガウランの容体を心配して従軍を拒んだ。怒ったチンギス・カンは、老臣ソルカン・シラ(*4)に命じてガウランをクランから取り上げ、モンゴル族の誰かに育てさせるように命じた。

ソルカン・シラはチンギス・カンの命に従い、ガウランを失ったクランチンギス・カンに同行した。その後、ソルカン・シラはガウランを誰に預けたかを口にしないまま天寿を全うしたが、チンギス・カンは、ガウランが「狼の子」であるならば、いずれ頭角を現し、再会することになるとクランに語った。

蒼き狼』の一貫したテーマの1つに「血」の問題がある。チンギス・カンもジュチも、その出生に疑わしい点があったが、彼らは行動によってモンゴル族の子、すなわち「狼の子」であることを示した。チンギス・カンはガウランに対しても、血筋ではなく、行動によって「狼の子」であることを立証するように命じたわけである。

追記。 『元朝秘史』の第3巻第111節に「雁鶴(ガラウン)」の語がある。岩波版上巻の104ページ参照。中国語原文の表記では「雁與鷀䳓(ガンおよびウ、ハゲタカ)」。岩波版上巻の276ページ参照。「現在の」モンゴル語では「雁」を「галуу(キリル語表記。グ・ア・ルー)」と呼ぶため、おそらくガラウンは「雁」か水鳥全般を指すものと思われる。


   
フランドル伯

本書によると、本作で想定されているフランドル伯はボードゥアン1世である。しかし、「ボードゥアン1世」という称号はラテン帝国皇帝としての称号であり、フランドル伯としてはボードゥアン9世にあたる(資料を読み違えて6世としたところを修正した。6世はエノー伯としての名称)。

彼は1205年にラテン帝国皇帝としてブルガリア帝国と戦い、敗れて消息を絶っている(戦死したと記したのを修正。捕虜になり、消息を絶ったらしい)ため、本来ならば1206年当時のフランドル伯は、彼の娘のジャンヌである。

また、ラテン帝国皇帝の地位は弟のアンリに受け継がれたが、『元朝秘史』のシナリオ1では、史実通りアンリがラテン帝国の国王となっている。なお、『元朝秘史』のシナリオ2でもフランドル伯が人材として登場しているが、彼は時系列的にフィリップ1世であると思われる。
 
 
解説はあるが、明らかに時系列がおかしい
   
ピウスツキ

本書には「20世紀におけるポーランド独立の指導者。ゲームでは時空を飛び越え、13世紀に彼が優秀な人材として登場したら?」という想定を行っている」ということが堂々と記されている。ちなみに、「決して裏切ることはない」とあるが、むしろ裏切りやすく設定されている(*5)ようである。

この時代ならば、資料の不足などから、このような妙なノリも許される雰囲気があったが、昨今の『三國志』シリーズでは、おまけ的存在とは言え劉邦や鄭和が登場したり、『信長の野望』に至っては、現在存命中の人物(*6)が登場したりするなど、むしろ傾向は悪化している。


   
ベク

本書では「セルジュク・トルコの建国者。イラン、イラクを平定して一〇五五年アッバース朝カリフからスルタンの称号を得る」とある。この人物は「トゥグリル・ベグ」のことであり、本作の舞台より100年前の人物にあたる。
 
 
解説はあるが、本来は人名ではない
   
スンナ

本書に「ゲーム上ではアイユーブ朝の優秀な人材の名だが、もともとはマホメットの言行からなる宗教的倫理的慣行のこと」とあるように、もはや人名でさえない。ちなみに、現在のイスラム教の多数派である「スンナ派」は、「スンナに従う人」とという意味を持つようである。


   
マジャール

本項の解説は「ハンガリーに定住していたウラル語系の民族。10世紀西欧に侵入するが、オットー1世に撃退される」。これだけだと、何の事だか良く分からないが、世界編第10国(ハンガリー)の「優秀な人材」の名前が「マジャール」であり、それが実は民族の名前(*7)だということである。
 
 
比定するべき人物はいるが、確証に乏しい
   
バマトル

現状では詳細不明であるが、モンゴル編の「優秀な人材」として、「四狗四駿」のほとんどが登場するなか、チラウン・バアトルだけが見当たらないことからすると、「バマトル」は「バアトル」の誤表記であり、チラウンのことを指している可能性がある。


   
江宗

第27国(大越大理連合)の「優秀な人材」であるが、大越国および大理国に「江宗」の廟号を贈られた君主は存在しない。しかし、「江宗」が「こうそう」と読めることから、当時の李朝ベトナムの皇帝であり、『元朝秘史』や『チンギスハーン』で同エリアを支配している「高宗」の誤字である可能性が考えられる。



ハインツ
   
第5国(ドイツ騎士団領)の「優秀な人材」として登場するが詳細は不明である。しかし、「ハインツ」の名を「ハインリヒ」の愛称として捉えるならば、『元朝秘史』に登場したフォン・ザルツァの前任の第3代ドイツ騎士団総長が「ハインリヒ・バルト」であり、彼のことを指していると考えられなくもない。


   
バルク

これも詳細不明であるが、登場するのが第20国(ムワッヒド朝)であることからすると、いくつか候補が考えられる。個人的に有力だと思われるものは、初代カリフのアブー・バクルの名前を間違えた、あるいは意図的にもじったものである。

強引なこじつけではあるが、「ガウラン」が「ガラウン」になっていることからも、可能性としてはありえなくもない。時代が明らかに違うという問題についても、ピウスツキという例がある。とはいえ、そこまで強引なこじつけをしないと、比定ができないということもまた事実である。その他の候補としては、アフガニスタンのバルフの古名、『旧約聖書』の「エレミア記」を口述筆記した書記官などが考えられる。

なお、『元朝秘史』のシナリオ3には、「1283年、プロイセン全土を征服した」というドイツ騎士団領の地方管轄長フォン・バルクが登場する。しかし、名前は同じであるとは言え、登場するエリアが違いすぎるため、関連性はないと思われる。


   
ヒイラマ

『元朝秘史』のシナリオ4(ユーザーシナリオ)では、ほぼ同じ場所(インド)の優秀な人材として「ビッラマ5世」が登場しており、発音もある程度似ているため、ヒイラマは彼のことなのではないかと思われる。このビッラマ5世はヤーダヴァ朝の始祖であるが、本作にも登場するホイサラ朝のバルラーラ2世に敗れて領土を喪失した。
 
 
現状では比定不可能
   
ツジーヴ

現状では詳細不明。第25国(パガン朝)の「優秀な人材」として登場する。


   
ネイク

現状では詳細不明。第17国(吐蕃)の「優秀な人材」として登場する。


   
ベイ

トルコ語。指導者に対する称号。本作では第22国(カリフ領)の「優秀な人材」として登場する。語源的には「ベク」と同じところにたどり着くらしい。普通は人名の後に付けられる。例として、光栄のゲーム的には『元朝秘史』や『チンギスハーン』に登場するマスウード=ベイ、『大航海時代Ⅱ』や『大航海時代外伝』に登場するガザノス=ベイなどがいる。
 
 
*1

モンゴル編第1国だけには「優秀な人材」は設定されていない。よって、モンゴル編でわざと第1国を開け渡し、取り返すことで「優秀な人材」を確認する必要はないわけである。


 
*2

新潮文庫版の第57刷。他のバージョンは確認していないため、もしかすると、「ガラウン」と表記されているものもあるのかもしれない。ちなみに、ガウランの初登場は217ページ、ガウランがクランのもとから連れ去られるのは242~246ページ、孫とともに狩猟をしながら、どこかで成長しているガウランに心の中で呼びかけるのは331~332ページに描写がある。


 
*3

ガウランの存在はフィクションであると思われるが、『歴史群像シリーズ25 チンギス・ハーン 上巻』の173ページによると、実際に2人の間にはクルゲンという息子が産まれている。彼はルーシ遠征に従軍するが、1237年に戦死した。


 

*4

タイチウト族。かつてテムジンがタイチウト族族長のタルクタイに捕らえられ、そこから逃走した際、ソルカン・シラは彼を匿い、馬を貸したことがあった。本作では未登場であるが、続編の『元朝秘史』には息子のチンベ、チラウンともども登場している。


 
*5

光栄ゲーム用語辞典』、302ページによると、「裏切りやすさ」は最低の「×」となっている。


 
*6

信長の野望・創造 攻略wiki」によると、『信長の野望・創造』には1984年生まれの平原綾香(Wikipedia)が登場するようである。特典武将とはいえ、黒田官兵衛に匹敵する「統率」、加藤嘉明や細川忠興並みの「武勇」、宇喜多直家と同等の「知略」、北条氏政に相当する「政治」と、コーエーテクモは彼女の才覚を非常に高く評価している。


 
*7

光栄ゲーム用語辞典』によると、「モンゴル人のモンゴル君、大越大理連合の大越大理連合君、みたいなもの(229ページ、『マジャール』の項)」とのこと。ちなみに、「偉大なる民族の名前を名乗っているくせに、能力は貧弱(同)」である。
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